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日本不妊カウンセリング学会

不妊の悩みに寄り添うカウンセラーの養成や
カウンセリングの普及を目指す

日本不妊カウンセリング学会 理事長 藤原敏博先生

医師や看護師をはじめ胚培養士や薬剤師などが集まって活動している、日本不妊カウンセリング学会。カウンセラーの養成やカウンセリングの普及、研究などに努めています。学会の目指すカウンセリングや養成講座の内容などについて聞きました。

カウンセリングのノウハウに加え、
不妊治療の知識を持つカウンセラーを育成する

日本不妊カウンセリング学会とは、どのような団体ですか? 設立の目的をお聞かせください。

当学会には、医師、看護師、胚培養士、心理カウンセラー、薬剤師、漢方薬剤師、鍼灸師などの専門的知識を持った者、不妊症の当事者や経験者など、さまざまな職種や立場の人が参加しています。

一般的な病気では診療する対象は個人ですが、不妊症ではカップルで診療することになります。そのとき、2人が常に同じ温度感で同じ方向を向いているかというと、なかなかむずかしい面があります。通院回数も多く、体外受精を行う際の身体的負担や精神的負担なども含め、どうしても女性に大きな負荷がかかります。また、「これだけやれば必ず結果が出る」というものでもありません。人間は少々の苦労があっても、頑張れば定められたゴールに到達できる確信が持てればモチベーションを保てますが、不妊症の場合はそうではないので、メンタルが苦しくなることも少なくありません。

ところが、当初はそのような部分をサポートするものがありませんでした。前聖路加国際病院 女性総合診療部長・生殖医療センター長である佐藤孝道先生は、その受け皿となるものが必要だと考え、2002年に当学会を設立しました。

不妊で悩んでいる方々が自分たちで最適な選択ができるようサポートするとともに、カウンセリングやケアの普及を図ること、それにかかわる研究などを行うこと、そして不妊カウンセラーや体外受精コーディネーターを養成することを目的として活動しています。

日本不妊カウンセリング学会の目指すカウンセリングとは、どのようなものでしょうか。

カウンセリングでは、まず何に困っているのか、悩んでいるのかについて相談者の話を聞き、共感することが大切ですが、カウンセリングする側の意見を押し付けたり、誘導したりしてはいけないというのが大前提です。相談者が自分で解決できるようにアシストするのが役割であることは、一般的なカウンセリングであっても、不妊症のカウンセリングであっても変わらないと思います。

ただし、不妊症のカウンセリングの場合には、もう1つ重要なことがあります。カウンセリングのスキルや経験があれば、相談者の話を傾聴することはできますが、やはり不妊症の医療行為などについての基礎知識を持っていないと、相談者がどういうステージにあって何に悩んでいるのかがわからず、説得力に欠けてしまいます。

ですから、当学会としては、カウンセリングのノウハウやテクニックなどについての指導、研究発表などを行っていくことを1つの柱、不妊症の診療についての知識や保険適用などのシステム面の変化に合わせたアップデートをもう1つの柱と考え、不妊カウンセラーと体外受精コーディネーター、2つの資格の認定制度を設けています。

不妊カウンセラーは、不妊症一般に関するカウンセリングを行うので、不妊症についての基礎的かつ全般的な知識が必要とされます。一方、体外受精コーディネーターは体外受精に特化したカウンセリングを行うため、不妊症の基礎知識に加え、体外受精に特有な治療法・技術や成績、また胚の培養についてどのようなプロセスで何が起こるのかなどといった知識も求められます。

資格認定後も5年ごとの更新で
知識をアップデート

不妊カウンセラーと体外受精コーディネーターの養成講座を開催されていますが、どのような内容で、どのような方が受講されているのでしょうか?

不妊カウンセラーと体外受精コーディネーターの合同の養成講座を、春と秋の年2回、東京で開催しています。従来は土・日の2日間、会場での開催でしたが、現在は日曜日のみにプログラムを凝縮し、リアルタイムだけでなくオンデマンド配信も利用して行っています。参加者の内訳は看護職が大きな割合を占め、胚培養士と臨床検査技師、医師、薬剤師、鍼灸師、心理カウンセラー、不妊症の当事者の方などが続きます。

不妊カウンセラーと体外受精コーディネーターの資格は、5年ごとに更新することになっています。更新条件の1つは養成講座の受講で、つまり、養成講座はこれから資格を取得しようとする方と、すでに資格を取得してアップデートしていく方という2つの層が受講することになります。

そのバランスを考えながら、年2回の研修委員会で委員が集まってブレインストーミングを行い、翌年度のテーマと講師を決めています。内容は、①「生殖医療の基礎知識」として不妊症の基礎知識や診断、治療などについて、②「カウンセリングとケアの基礎」としてカウンセリングの基礎や活動報告、実際の支援について、③「明日の生殖医療」として今後の不妊治療の展望についてといったかたちです。

養成講座ではカウンセリング実習的なプログラムも行っていますが、やはり人と人とのコミュニケーションが大事な分野なので、それだけでは不十分です。従来は人数を20〜30人に限定して学会内でカウンセリングセミナーを開いていましたが、コロナ禍の影響で中断して以来は行っていないため、今後はカウンセリングの専門家と共同で、新たなシステムを構築しなければならないと考えています。

資格を取得するためには、認定試験を受けると聞いています。試験や資格更新についてお聞かせください。

毎年、年末に東京と大阪で認定試験を実施しています。午前中に筆記試験を行って、合格した方を対象に、午後に5人ぐらいを1グループとした面接試験を行います。

筆記試験の出題内容は不妊症の原因や診断、治療などに関することが多いのですが、なるべくむずかしくなりすぎないようにし、合否判定は受験者の点数に基づく相対評価で決めています。面接試験は、カウンセラーとして人と接するにあたっての適性を確認するために行っています。あまりにもコミュニケーションがスムーズではなかったり、あるいは考え方が偏りすぎていたりした場合を除き、面接試験で不合格になることはそれほど多くありません。

更新の条件は、養成講座を3回受講すること以外に、学術集会または講演会に2回出席することです。現在、学術集会は会場での開催ですが、今後は養成講座同様にオンデマンドでの視聴も考えています。その場合は、2回のうち1回は会場に参加してもらうことになると思います。

message

カウンセラーの存在を知って、
悩んだときにはぜひ活用を

不妊治療を始めようか迷っている方や実際に不妊治療を行っている方へ、メッセージをお願いします。

不妊治療が妊娠・出産につながればハッピーエンドになりますが、なかなか妊娠しない、どうすれば妊娠するのかがハッキリわからないという状況の中で、メンタルが不安定になることも多いものです。

そういう場合には、カウンセリングを受けていただくと、気持ちが安らぐのではないかと思います。当学会認定制度をクリアしたカウンセラーが全国各地の病院やクリニックなどで働いていますので、存在を知っていただきたいですね。

どのようなところにカウンセラーがいるのかは、当学会のウェブサイトの「カウンセラー名簿」をご覧いただければ、県別に検索できるようになっています。悩んだときには、ぜひ活用していただければと思います。

当学会も、患者さんの悩みに応えられるような人材を、今後も育成していきたいと思っています。