男性不妊や心の問題にも対応する
幅広い相談窓口を設置
同技師 惣田にきさん(保健師)(右)
不妊症や不育症について知りたい方や悩んでいる方の相談に応じている、神奈川県不妊・不育専門相談センター。女性の不妊・不育だけでなく、男性不妊、不妊・不育にまつわる心の問題にも専門医や専門家が対応しています。相談窓口の内容や利用状況、今後について聞きました。
よりよい相談窓口を実現するために
相談員と振り返りや意見交換会を
「神奈川県不妊・不育専門相談センター」は、どのような相談窓口ですか?
重松:平成16年10月に「不妊相談センター」というかたちで始まり、現在の名称になったのは平成24年4月です。
開設当初から、助産師による電話相談と婦人科医による面接相談、泌尿器科医による面接相談を設けており、平成21年度から臨床心理士による面接相談、平成24年度からは婦人科医による不育相談を加えています。
コロナ禍を経て現在は、婦人科医と臨床心理士による相談は来所とオンライン、泌尿器科医による相談はオンラインになっています。どれも、多少の入れ替わりはありながらも、長く相談を受け持っているベテランの医師や助産師、臨床心理士が担当しています。
助産師による電話相談は相談日の9時〜11時30分まで、事前予約不要で受け付けています。同日の午後に婦人科または臨床心理士の面接相談を開いていますが、こちらは予約が必要になります。面談の際には、午前中に相談を受けた助産師が婦人科医または臨床心理士の面接相談に同席し、ご相談者が話しやすい雰囲気をつくったり、医師の言葉をかみ砕いて説明したりなど、ご相談の道しるべとなる役割をしています。
ご利用いただくための工夫がありましたら、お聞かせください。
惣田:相談が終わったあとに、医師や助産師、臨床心理士などの相談員と健康増進課の職員が集まり、カンファレンスを実施しています。そこで、「今日はこのような相談があった」「こういう相談があって、このように回答したけれどもよかったかどうか」などと振り返り、情報の共有をして、よりよい相談につなげるようにしています。
それ以外に、相談員からのご要望もあり、意見交換会も年に1回、年度末に開催しています。今年度はこういう相談が多かった、このような特徴があった、来年度はこうしていったらいいのではないかなどの意見をいただき、翌年度に活かしています。
男性不妊は泌尿器科医が、
心の問題には臨床心理士が対応
泌尿器科医や臨床心理士による相談を開設している自治体はそれほど多くはないと思います。どのような経緯で開設したのでしょうか?
重松:不妊相談センターを立ち上げるときに県の産科婦人科医会にご相談して協力を仰いだのですが、その際、先生方から「婦人科相談だけではなく、泌尿器科相談もしたほうがいい」とアドバイスをもらい、泌尿器科医をご紹介いただきました。県としても、不妊は女性だけの問題ではなくて、半分は男性にも原因があるということから、すぐに開設することを決めました。
臨床心理士による相談についても、もともとは保健所で女性の健康相談支援事業の一環として相談を受けていたときに臨床心理士から、「不妊の心理的な相談が多くある」という声を聞いていました。それと同時に、保健所で不妊の助成申請を受けていた保健師からも、「心理的な相談ができる窓口があったほうがいいのではないか」という意見もあり、スムーズに導入されました。
泌尿器科医による相談では、どのような方から、どのような相談が多いのでしょうか?
惣田:ご夫婦での申し込みが多いですね。県のホームページでは「男性不妊に悩まれている方」を対象としていましたが、その文言では、すでに診断を受けていなければ相談ができないという印象を与えるかもしれないと考えました。
そこで今年度から、「通院していなくても診断を受けていなくても、夫婦生活に悩んでいる方」「男性の視点から妊活について知りたい方」が気軽に相談し、より多くの方にご利用していただけるように「男性妊活相談」という言葉も追加しました。
オンライン相談なので、男性が相談されたいときは女性が離席されることもありますし、相談員から「男性とだけお話ししたほうが話しやすいかもしれない」と声をかけたりするなど、柔軟に対応しています。
相談内容としては、検査結果を受けての今後の治療方針についてもありますが、性交渉がうまくいかなくてどうしたらよいかといったご相談や、“妊活”としてできることなど、男性不妊より一歩手前のご相談が多いと感じています。
泌尿器科医からは、どのようなアドバイスをしているのでしょうか?
惣田:まずは、妊活はパートナーと2人で取り組んでいくこと、夫婦でお互いに相手を思い合ってどんなことができそうか、きちんと伝えていくことが大切だというところをお話ししています。また、男性不妊においても生活習慣が大事なことから、食事や睡眠のほか、精子は熱に弱いためサウナなどは控えるというような、こまかい注意点もお伝えしています。
重松:医師をはじめとした相談員は、良い悪いという判断をしているわけではありません。ご相談者の考えを優先させながら、自己決定ができるようにサポートしています。すでに治療を受けている方であれば、現在の主治医との関係をくずさないようなあり方でというのも意識してお話ししています。
臨床心理士による相談では、どのような方から、どのような相談が多いでしょうか?
惣田:年代としては、30代が一番多く、ついで40代、20代の方です。昨年の相談では8割が女性から、2割が男性からで、相談件数は年々増加傾向にあります。
夫婦間のコミュニケーション、不妊治療が続くことへの不安、治療のやめどきといったご相談のほかに、近年は流産・死産後の「グリーフケア」として利用される方が増えている印象があります。
臨床心理士からは、どのようなアドバイスをしているのでしょうか?
惣田:この場合も、ご相談者がそれぞれの状況に応じて意思決定ができるようなスタンスで、お話をしています。たとえば、コミュニケーションの問題や流産・死産後の「ぺリネイタルロス」では、ご相談者のお気持ちを傾聴して、つらい思いや葛藤を受け止めながら、そのお気持ちを整理するというあり方です。
利用状況を見ながら今後の相談日を検討し、
申し込み方法も使いやすく改修していく
ご相談者からの反響や感想がありましたら、お聞かせください。
惣田:相談種別ごとにアンケートを取っているわけではないのですが、「治療している病院ではゆっくり話す時間がないので、わからないことを質問できる窓口があるのは心強い」「さまざまな情報があって自分で判断することがむずかしいなか、専門家の意見を聞いて取捨選択できる機会になった」などの声をいただいています。臨床心理士との相談では、「落ち込んでいたが、次に向けて動き出したいと思い、相談を申し込んだ。受けられてよかった」という方もいらっしゃいました。
そのほか、婦人科医による面談を受けてから臨床心理士による面談を受けられる方や、婦人科医の面談を受けた数カ月後に検査結果を持って再び相談される方もいらっしゃいます。
重松:来所までの移動時間がかかることや、2人目不妊でお子さんを連れての来所がむずかしいという方もいらっしゃるので、オンラインのニーズが年々高まっていると感じています。「来所をオンラインに変更できますか?」というお問い合わせなどもあり、柔軟な対応を心がけています。
相談日を増やすなど、今後の展望はありますか?
惣田:相談日については、申し込み状況やニーズなどを踏まえながら、検討していきたいと思っています。
重松:当初、年に4回で始めた臨床心理士による相談は、需要があることがわかって現在は5回になっています。今後も状況を見て柔軟に考えていきたいと思います。
惣田:今後は、申し込み状況がわかりやすいように、予約申し込みフォームの改修を予定しています。これまでは、相談日と相談時間を希望する時間枠に入力して申し込んだのち、予約が埋まっていた場合には予定を変更していただくこともありました。改修によって、カレンダー形式で日にちをクリックすれば予約の可否がわかる状態にしたいと考えています。
丘の上のお医者さん