一般不妊治療から高度生殖補助医療まで
納得するまで寄り添ってサポート
国立成育医療研究センターでは、2024年10月に女性のライフステージごとの健康問題や女性特有の病気などを総合的かつ専門的に診療する「女性総合診療センター」を開設しました。その中の1つ、不妊診療科の特徴や利用状況、診療内容などについて聞きました。
女性内科・女性精神科と連携し、
持病を持つ方の不妊治療を支える
女性総合診療センター不妊診療科の特徴をお教えください。
女性総合診療センターには5つの科が属し、女性のライフステージごとの健康課題に対して専門的な医療を提供する女性内科や、ライフステージによって起こり得る心の不調に寄り添い、診療を行う女性精神科などがあります。不妊診療科では、これら2つの科と連携しながら、内科的な合併症や精神的なストレスを抱える女性の不妊治療をサポートしています。
検査をして甲状腺の数値が高かった方や血圧が少し高めな方、うつ病など精神的に不安定な方などは女性内科や女性精神科にコンタクトを取り、薬を処方するなどの治療を行ってもらったうえで、どのような治療をしたかを受け取って不妊治療を進めるといったかたちです。
その際に最も大切なポイントは、「今、妊娠してもいい状態なのかどうか」です。例えば、体重が極度にオーバーしているとハイリスク妊娠になったり、採卵できなかったりすることがあります。その場合は、まず女性内科で体重管理を行い、「妊娠してもいい」という許可が出るまでの間に不妊診療科にも通院してもらって、不妊検査をひと通り行っておくことになります。ですから、1回受診したらすぐに検査結果が出るわけではなく、すぐに治療が始まることもありません。
同じように女性精神科との連携においても、治療を行ったとしても「精神的なストレスを抱えやすい」という素因がなくなるわけではありません。胎児に影響の少ない薬に変更してもらうまでは妊娠できないのはもちろんですが、そのような自分の性質とどのように付き合っていくかが身につかないと、不妊治療をいざ始めてみたときにホルモン状態の急激な変化や妊娠が不成立だったときのショックなどに耐えられないため、その見極めが必要です。
ときには女性内科と女性精神科の両方での治療が必要ということもあります。そうした場合には女性内科で検査したり、その結果を聞いたり、結果によっては他の大学病院を紹介して検査してきてもらったり、女性精神科で精神状態の評価をしたりして、そのあとで各科の医師がミーティングを行い、患者さんに伝えてその反応を見てどうするか……というように多くのステップを踏む場合もあり、かなりの時間がかかることがあります。
「断らない」が不妊診療科のモットー
実際に受診される方の年齢や特徴、受け入れ体制などについてお聞かせください。
不妊診療科は女性内科や女性精神科と連携して治療を行っていますので、合併症や持病をお持ちの方が比較的多くいらっしゃいます。また、不育症の治療を行う「不育診療科」という科が「周産期・母性診療センター」にあり、そちらとの連携で受診される方もいます。
初診でいらっしゃる方は30代が多いです。割合でいうと、3分の1ぐらいが他のクリニックですでに不妊治療を受けていて、「今の治療方法でよいのか確認したい」「女性総合診療センターの治療内容について聞きたい」という方で、最終的には通院中のクリニックでの治療を継続される方。3分の1が持病があって不妊治療をスタートできるかどうかの評価がむずかしい方。残りの3分の1がこれから不妊治療を始められる方です。
紹介状を持ってくる方が多いですが、なくても受診はできます。ただし、かかりつけ医からの紹介状がないと、服用している薬やそれまでの治療状況がわからないため、紹介状をいただいてきてほしいとなることも少なくありません。紹介状があったほうが、その後の治療がスムーズだというのは確かです。
当科では、前部長のころからの「断らない」というモットーを引き継いでいます。体外受精の採卵に年齢制限を設けているクリニックも多いですが、当科では何歳でも受診をお断りすることはありません。もちろん、年齢によって不成功になる確率などについてご説明し、検査を早く受けていただくような声かけもしています。それによって治療をやめる方や負担の少ないタイミング法にされる方もいらっしゃれば、やはり採卵したいという方など、どうされるかは患者さんそれぞれです。そのすべてのケースについて、患者さんの決断を受け入れ、納得されるまでサポートを続けています。
どのような不妊治療を行っていますか?
当科では、タイミング法や人工授精などの一般不妊治療と、体外受精や顕微授精などの高度生殖補助医療の治療を行っています。
不妊治療を始められる方の半分ぐらいは、自己流でタイミング法を行っていたような、一般不妊治療から始めるべき方々です。残りの半分ぐらいは、他のクリニックで体外受精などをしていたり、一般不妊治療を経て転院してきた方などです。
「タイミング法の相談のために受診してもいいですか?」と聞かれることがありますが、不妊治療は通院しやすいところで受けるのがいいと思っています。不妊治療というのは、受診したらそのままタイミング指導をするわけではなく、まずは治療方針を決めるために不妊のスクリーニング検査をします。卵管が詰まっていたり、男性側の精子に問題があったりする場合には、タイミング指導をしても意味がないからです。つまり、タイミング指導だけでいいかどうかは、結局、受診してみないとわからないということになるので、まずは受診してみることをおすすめします。
高度で先進的な医療を提供する
“ナショナルセンター”としての側面も
国立の医療機関ならではの不妊診療の取り組みについてお教えください。
当センターは国立の医療機関ですが、それだけではなく、厚生労働省が全国で6カ所ほど指定している、国立高度専門医療研究センター=ナショナルセンターとしての役割を担っています。つまり、高度で先進的な医療を提供する病院です。
ですから、不妊治療を行うのはもちろんのこと、病気の方の妊孕性(にんようせい)温存のための卵子凍結などの整備、着床前遺伝学的検査(PGT)のうちでも、重篤な遺伝性疾患のリスクのある方に対して遺伝性疾患を調べるPGT-Mについて、全国のモデルになるような整備を行っています。
今後を見据えて、病気ではなく、仕事のキャリアプランなどで卵子凍結を行う場合、ただ単に卵子を凍結して終わりでいいのかどうかについて考え始めています。ゴールは妊娠ではなく、元気な赤ちゃんを抱っこすることなので、妊娠が成立して出産するまでの安全を目指さなくてはなりません。そう考えたときに当科だけでは不可能なので、女性内科のプレコンセプションケア担当医との連携などについて、話し始めているところです。
国立研究開発法人
国立成育医療研究センター