行政のサポートを
不妊・不育の不安解消に
役立てて

こども家庭庁成育局母子保健課 課長補佐 富田(中央)・生殖補助医療対策専門官 三宅(左)
思春期、妊娠、出産等のライフステージに応じた切れ目のない相談支援等を行う「性と健康の相談センター事業」。不妊治療や不育症をめぐるさまざまな悩みに対するサポートも行っています。この事業を推進しているこども家庭庁と、実際に相談窓口「東京都 不妊・不育ホットライン」を開設している東京都福祉局の担当者が対談。どんな相談が寄せられているのか、どんなサポートをしているのか、それぞれの立場から話してもらいました。
プレコンセプションケア推進を目指し、
事業をスタート
こども家庭庁の「性と健康の相談センター事業」について、スタートした経緯や込められた思いを教えてください。
富田:従来は「生涯を通じた女性の健康支援事業」として「女性健康支援センター事業」や「不妊専門相談センター事業」などで、思春期から一生を通じた女性の健康づくり、不妊症や不育症、若い年齢での妊娠から、妊娠・出産に関するさまざまな悩みなどまでサポートを行ってきました。
令和4年度からは女性だけでなく、男女ともに性や妊娠についての正しい知識を身につけて健康な体づくりを目指す「プレコンセプションケア」も推進していこうという目的で、これらの事業を統合しました。
不妊症・不育症に悩むカップルやそのご家族の方の悩みや不安に役立てるよう、ご夫婦の健康状態に応じた的確な不妊治療に関する相談支援や不妊治療と仕事の両立に関する相談対応、不妊治療に関する適切な情報提供などで一翼を担っていただければという思いで、相談支援などを行う「性と健康の相談センター窓口」を開設し、全国の都道府県や指定都市・中核市での開設を推進してきました。
そして、本日お越しいただいている向後さんのような皆さまに日々ご協力をいただいています。

ピアカウンセラーと医師が常駐する
不妊・不育ホットライン
「性と健康の相談センター窓口」のひとつである「東京都 不妊・不育ホットライン」は、どのような相談窓口ですか?
向後:私たち東京都福祉局が運営している「東京都 不妊・不育ホットライン」では、不妊症や不育症のお悩みについて、同じ不妊症や不育症に悩んだ経験を持つ「ピアカウンセラー」が、医師の指導のもと、電話でご相談をお受けしています。
不妊症や不育症に関するお悩みであれば、かかる費用や検査のこと、医療機関の情報について、今抱えている悩みや不安など、幅広い内容をご相談いただけます。
「ピア」とは「同じ仲間」という意味で、私たちがご一緒しているピアカウンセラーは不妊症や不育症の経験があり、カウンセリングを学んだ方です。しっかりと研修などを受けた方がご相談を受けていますので、安心してご利用いただければと思います。
相談を受けるにあたり、どんなことを意識していますか?
向後:お話を傾聴するとともに、必要に応じて適切な情報を提供することを基本にしています。不安を感じてお電話されてきているご相談者さんがとても多いので、その不安やストレスを緩和することを心がけながら相談に応じています。
医師はピアカウンセラーと同じ部屋に待機していて、専門的な知識が必要なときにはピアカウンセラーが医師に確認しながら相談を進めるという体制になっています。
三宅:まずピアカウンセラーの方がご相談者さんのお気持ちを受け止めてくださって、さらに必要に応じて不妊症や不育症の医学的な知識もしっかりフォローしていただけるというのは心強いですね。
相談者のニーズに応えるため、
開設時間の工夫も
「東京都 不妊・不育ホットライン」では、どんな時間帯に利用者が多いのでしょうか?
向後:当ホットラインでは、毎週火曜日の午前10時から午後7時、毎月1回土曜日、基本的には第3土曜日の午前10時から午後4時、ピアカウンセラー2名、医師1名体制で相談を受けています。相談については、基本的に時間制限は設けていません。
令和5年度のデータでは、火曜日の午前10時台の相談がいちばん多く、その次が火曜日の午前12時台です。ピアカウンセラーによると、前の週から相談しようかと考えていて、当日開設時間になったらすぐ電話してこられる方が多いのではないかと。
また、土曜日より火曜日が多いことについては、土曜日だと家族がお家にいるため電話をかけにくいのかもしれないですね。
開設当初は午前10時から午後4時までだったのですが、フルタイム勤務の方も増えていることをふまえ、令和4年度から午後7時までになったんです。多くの方にご利用いただけているので、変更してよかったなと感じています。

三宅:役所の窓口など行政関連ですと、午後4時や午後5時に閉まることも多いですが、「東京都 不妊・不育ホットライン」では受付時間を長く設定していらっしゃるので、働いている方もお電話しやすいですね。
検査に関する相談や通院中の方からなど
多様な相談内容
実際に「東京都 不妊・不育ホットライン」に寄せられる相談は、どのような内容が多いのでしょうか?
向後:不妊症や不育症ですでに不妊治療クリニックに通院している方からの「今、こういう検査や治療を行っているけれども、ほかにどのような検査や治療があるのか」といったご相談と、不妊症や不育症に関してご自身が感じている悩みや不安という2つが多いですね。
富田:実際に不妊治療や不育症の治療で悩んでいることや治療法についての相談をされている方も多いのですね。「性と健康の相談センター窓口」開設当初は、不妊治療を始める前の方からのご相談が多いことを想定していました。
医療機関を受診していても不安な方はいらっしゃって、そのような方にもご活用いただけているのは、参考になる正確な情報を提供されているからですね。
向後:当ホットラインへ寄せられている不妊症についてのご相談の6割は、不妊検査を終えられて不妊治療中の方からです。不育症については、検査や通院を検討中の方や、不育症の検査を終えられた方からのご相談が多くなっています。
三宅:医療機関につながれば正しい情報を得られるのかなと思いますが、医療機関に「これでいいのかな?」となかなか聞けずにいる方もいらっしゃるのでしょうね。
男性やご家族からの相談も増えてきています
三宅:ちなみに、ご相談される方の年齢でいちばん多いのは何歳ぐらいですか? 男性からのご相談もありますか?
向後:35〜39歳が最も多くて全体の4割を占めています。これについては、ここ数年の推移を見ても変化はありません。
ご相談される方は女性が多いですが、令和5年度は不妊症で全体の1.6割、不育症で全体の0.7割が男性からのご相談で、多いのは検査の内容についてと、不妊症や不育症に関しての悩みや不安ですね。また、不妊症・不育症当事者のご家族からのご相談もあります。
富田:男性が意外に多いですね。男性不妊は不妊症全体の2.4割、男女ともに不妊原因がある場合が2.4割、合わせて5割弱は男性にも不妊の原因がありますが、そのことが社会に知られるようになり、男性ご自身も問題意識を持たれる方が増えてきたのかなと感じます。
三宅:「不妊症や不育症は女性だけのことではない」と社会に浸透してきていることを反映しているのかなと。いい傾向ですね。
ご家族からのご相談は、どのような内容なのでしょうか?
向後:ご自身の娘さんや息子さんが不妊症や不育症で悩まれている方からで、声かけの仕方などに悩まれてご相談くださる方が多いです。
三宅:その点でも、女性だけでなく、不妊の原因の半分は男性にもあるということが周知されてきていることがわかりますね。周りの方もなんとか支えてあげたいというお気持ちなのだと思います。
何度もゼロから話さなくていい安心感
向後:そのほか、当ホットラインの特徴として、複数回ご相談される方が3割ほどいらっしゃいます。
当ホットラインでは、相談履歴をカルテのような形にして管理しています。そのため、一度ご相談いただいた方にもう一度最初からお話を伺うことはありません。ピアカウンセラーは今までどのようなご相談があって今回お電話がかかってきたのかを把握したうえで、ご相談をお受けしています。
三宅:個人情報や治療歴などを何度も話す必要がない、ゼロからではないというところが、複数回のご相談につながっているのでしょうね。それだけ頼りにされていらっしゃるのが伝わってきます。
向後:ご相談される方には、安心していただけているのではないかと思います。複数回ご相談くださった方から、「赤ちゃんが生まれました!」という、うれしい報告をいただくこともあります。
ご相談者さんからの反響や感想などがありましたら、お聞かせください。
向後:「焦りと不安で電話せずにいられなかったけれど、相談したら落ち着いた」「自分の気持ちを話せるところがなくてとてもつらかったので、話を聞いてもらって気持ちを落ち着かせることができた」というような、安心につながっているといったお声をいただくことが多いです。
「前回の相談で気持ちがラクになったので、また電話させていただいた」というお声も少なくありません。
安心して話せる場があることを知ってほしい
東京都としては、どんな方にホットラインを利用していただきたいと思いますか?
向後:不妊症・不育症、それに付随するご家族の方の悩み、産むことだけでなく、産めないこと、産まないことについてなど、これからも幅広く、都民の方のご相談に寄り添って、安心して話ができる場所を提供していきたいと考えています。
また、東京都では不妊症や不育症へのサポート事業も行っていますので、それについても積極的に発信していきたいと思っています。
こども家庭庁としては、全国の「性と健康の相談センター窓口」をどんな方に利用していただきたいと考えていますか?
富田:不妊症や不育症でお悩みの方や、医療機関を受診したほうがいいのかわからないという方にとっては、窓口があることで相談のハードルがひとつ下がったといえると思います。
なかなか周りに相談できないという状況もあるかと思いますので、必要とされている方がいらっしゃれば、ぜひ各自治体のサイトで窓口を探していただいて、ご活用いただければと思います。
三宅:この事業が統合された経緯として、男女ともに性や妊娠に関する正しい知識を身につけていただきたいということと、ライフステージに応じた切れ目のない相談や支援をしていきたいということがあります。妊娠・出産を考える年代の方、またそのご家族の方などには、ぜひ自分ごととしてとらえていただけたらと思っています。

不妊症・不育症のお悩みがある方は、
専門の窓口にご相談ください。
- 毎週火曜日:午前10時から午後7時まで(祝日及び年末年始を除く)
- 毎月1回土曜日:
午前10時から午後4時まで